Last Modified: 3/02/02

第91回看護師国家試験・微生物関連問題の解答・解説

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AM2. 免疫学

抗体産生で正しいのはどれか。

1. 好中球は抗原提示細胞である。
2. B細胞が抗体産生細胞に分化する。
3. 異物に対して IgG が最も早期に産生される。
4. 血中濃度が最も高い抗体は IgM である。

(解説と解答)

抗原提示細胞,液性免疫と細胞性免疫についてはその概略をマスターしてください。

1. ×好中球は非特異的に異物を貪食しますが,マクロファージと異なり,抗原提示能はありません。

2. ○B細胞は活性化されると形質細胞(プラズマ細胞)に分化し,抗体を産生します。

3. ×抗体の応答はまず IgM が産生され,次いで IgG が産生されます。よって多くの感染症の初感染を診断するのに IgM は有用です(たとえば急性A型肝炎の診断とか,ですね)。

4. ×多い方から「GAMDE(ガムデ)」の順です。IgM が5量体であること,IgG のみ胎盤通過性であること,T型アレルギーに IgE が関与すること,粘膜免疫や母乳などの分泌物に含まれる抗体で重要なのは IgA であること,なども併せて覚えてください。

正解:2

 

AM17. EHEC感染症

腸管出血性大腸菌 O157 感染症に見られる症状はどれか。

1. 腸穿孔
2. 蛋白漏出性胃腸症
3. 過敏性腸症候群
4. 溶血性尿毒症症候群

(解説と解答)

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症(原因は O157 だけでなく,最近では O26 も多い)は三類感染症ですが,約 10% の患者が HUS (hemolytic uremic syndrome: 溶血性尿毒症症候群)を続発する,ということも重要です。血小板減少,貧血,尿量減少,タンパク尿などが主徴で,約 3% が死亡するので予断を許しません。治療は血液透析。とくに乳幼児・高齢者に注意が必要です。

正解:4

 

AM18. 抗菌薬の適正使用・アナフィラキシーショック

基礎疾患のない呼吸器感染症に対する抗菌薬の使用で適切でないのはどれか。

1. セフェム系抗菌薬の投与開始前に,皮内反応の結果を主治医に確認した。
2. 初回投与後 30 分,蕁麻疹様の皮疹が出現したので減量し,主治医に連絡した。
3. 第2回投与時,冷汗と口唇のしびれ感とが出現したので中止し,主治医に連絡した。
4. 投与後5日,解熱傾向がないので継続投与について主治医に確認した。

(解説と解答)

問題は1〜3が抗菌薬が原因のアナフィラキシーショックについて聞いています。ところが4のみ抗菌薬の適正使用についての問になっています。問では述べていませんが,薬剤によるアナフィラキシーの可能性がある点滴室や造影検査室では,挿管セットや酸素などの人工呼吸関連器具がすぐに使えるようにしておかなければなりません。

1. ○抗菌薬を投与する前に,皮内反応の結果を見るのは原則です。但し皮内反応ですべてのアナフィラキシーショックが予見できるわけではないことにも注意してください。

2. ×アナフィラキシーショックは薬疹で始まったり,場合によっては「胸が苦しい・息苦しい」とか「冷や汗」という症状で始まることがあります。いずれにしてもアナフィラキシーが疑われれば,何よりもまず最初にすることは「点滴の中止」です。スピードを落とす,のではありませんし,ステロイドの投与,とかいうのもそのあとです。

3. ○一回目でOKなら2回目以降はアレルギーは出ない,という訳でもありません。2.で述べたように異常があればすぐに点滴を中止します。

4. ○これは抗菌剤の適正使用に関する問題です。抗菌剤はしばしば,原因菌を同定しないで,いわゆる empiric therapy(経験的治療,と訳されることが多い)として投薬されることもありますが,その際には検査結果や自他覚症状によって治療の妥当性を確認し,フィードバックをかける必要があります(「抗菌薬使用の手引き(日本感染症学会・日本化学療法学会編,協和企画 2001)。Empiric でなく,菌が分離されており感受性試験で有効であると分かっている抗菌薬を投与して,それでも解熱傾向にない,という場合も,その菌が本当に感染症の起因菌だったのか,あるいは薬物の動態はどうなのか(患部に有効濃度が維持されているのか)など,検討する必要があります。いずれにせよ効果がないのに漫然と投与するものではありません。

正解:2

 

AM22. ヘリコバクター・ピロリと消化性潰瘍

消化性潰瘍の治療に抗菌薬が処方される目的はどれか。

1. 日和見感染の防止
2. 胆道感染の防止
3. 胃粘膜の微生物の除去
4. 正常腸内細菌叢の除去

(解説と解答)

2000年11月,ヘリコバクター・ピロリの除菌治療が承認されました。2種類の抗菌剤(アモキシシリンとクラリスロマイシン)と制酸剤(プロトンポンプインヒビターであるランソプラゾール)の3剤を併用します(それ以外の組合せは保険が通りません)。ヘリコバクター・ピロリは胃・十二指腸潰瘍の原因菌として強く疑われている菌であり,除菌治療で潰瘍の再発を防ぐことができます。
ところがこれは余談ですが,除菌治療後に逆流性食道炎が起こる場合があり,ヘリコバクター・ピロリは逆流性食道炎に対してはむしろ予防的に働いているのでは,という仮説がでています。両刃の剣,みたいなかんじでしょうか。M.J.Blaser, J. Infect. Dis 1999;179: 1523-1530.には下のような絵が描いてあります。Cag+とか-とかいうのはとりあえず興味のあるヒトだけ調べてもらうことにして,ピロリは胃の下部 lower stomach や十二指腸 duodenum には悪さをするけど,胃の上部 upper stomach や食道 esophagus にはむしろよい(ニコニコマーク)ということが言いたいようですね。

解答:3

 

AM23. 免疫学(GVHD)

輸血後宿主片対宿主病(GVHD)で正しいのはどれか。

1. 赤血球濃厚液では起こらない。
2. 新鮮凍結血漿で起こる。
3. 血縁者からの輸血では起こりにくい。
4. 血液に放射線を照射して予防する。

(解説と解答)

輸血後 GVHD は濃厚赤血球液輸血や血小板輸注の際に微量に含まれるリンパ球が,輸血をうけたレシピエントの組織を異物とみなして攻撃することによって起こる病気です。(臓器移植の拒絶反応は HVGD といわれてこれとは逆です)。

輸血後 GVHD についての三重大学輸血室のページ

1. ×微量に混入しているリンパ球が問題となります。

2. ×凍結すると細胞膜が破裂してしまうので危険性は少なくなると考えられます。但し凍結していない血漿の場合はリンパ球混入の危険性があるのではないでしょうか。

3. ×理論的にはむしろ逆で,HLA 型が比較的近いため輸血されたリンパ球が生き残り易く,もし輸血された体内で分裂増殖したら,GVHD がさらに起こりやすくなると考えられます。

4. ○上述の三重大学輸血室のページによるとリンパ球捕捉フィルターを輸血ラインに用いる方法もあるようですが,完全ではないようです。

(正解)4

 

AM44. 無菌操作

無菌操作で正しいのはどれか。

(解説と解答)

清潔操作は理屈で覚える,というよりも,態度として身につけるものなのですが,筆記試験のみということで,こういう問題形式でしか問えないのですね。

1. ×まず綿球はある程度絞ること。ポタポタしたたっているのがまず間違い。そして綿球を持ち手より下にしないと,消毒液が摂子(ピンセット)を垂れてきて,場合によっては持ち手の辺りまで来ます。そして今度は綿球を下にすると,これが綿球の方に元に戻る,と考えるととっても不潔ですね。

2. ??変な問題です。絵では左手用の手袋しかないので,右手はもう手袋をはめているのかな,と思ったら素手のようです。じゃあ左手用の手袋は左手で取らないといけないはず。仮に絵が間違いで,右手用の手袋を右手で取っていると解釈すると,右手は素手で不潔なので手袋の内側にしっかり突っ込んで欲しいのですが,折り返した部分を含め手袋の裏面を不潔と考えると,まあ許せる範囲内かも知れません。しかし手袋を包んでいる紙を持っている左手は素手とすると明らかに間違い。この紙の内側も清潔と考えるべきです。3.での覆布と同じ考え方ですね。

3. ○覆布の内側が清潔,外側が不潔,と考えて,必ず外側のみを持ちます。よって正解。

4. ×ディスポ注射針はプラスチックと紙の「間」に入っていますが,絵ではそのうち紙を「ビリッ」と破ってますね。これが間違いです。ちゃんと片方の端に紙とプラスチックを剥がすための場所があり,そこから剥がすようにします。

(正解)3

 

AM58. 創傷の消毒処置

汚染や感染のない皮膚欠損のある創傷の処置で正しいのはどれか。

1. 黒色の痂皮は除去しない。
2. 創傷の外周から中心に向けて消毒する。
3. 創傷は湿潤環境に保つ。
4. 創傷はポビドンヨードで消毒する。

(解説と解答)

微生物というより,創傷治癒機転を聞いている問題もあるので,臨床外科の問題かも知れません。

1. ×これは外科で習ってください。

2. ×汚染創・感染創の場合は外から中,そうでない場合は中から外です。「きれいな方から汚い方へ」という原則は,お家のお掃除や食器洗いとかでもいっしょですよね。

3. ○これも創傷治癒ということで外科で習ってください。

4. △〜×「消毒薬」は「抗菌剤」と異なり,微生物にもヒトの細胞にも等しく毒性を示します。だから汚染や感染のない皮膚の場合,なるべく「弱い」消毒薬を使いたいなあ,という考え方です。というわけで普通はグルコン酸クロルヘキシジン(ヒビテン(R))を使いますね。但し,たとえば緑色の膿(シュードモナス属が疑われますね)を見た場合,ヒビテンが無効なことがある,というのは微生物の側でのヤマですな。

(正解)3

 

AM68.MRSA保菌者への対応

メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)が鼻腔から検出された在宅療養者への指導で正しいのはどれか。

1. 食器は消毒後に洗う。
2. ベッド周囲は消毒用アルコールで拭く。
3. 手洗いには薬用石けんを使う。
4. 外出時にはマスクをする。

(解説と解答)

MRSAは,(おもに手指を介した)接触感染である,健康保菌者が存在する,医療従事者がしばしばベクターとなる,ということが重要です。

1. ×経口感染する病原体のとき,場合によっては必要になることはあります。

2. ×接触感染でも器具を介した接触が疑われる病原体の場合(流行性角結膜炎の病原体・アデノウイルスなどがそうですかねえ?)には有効かも知れませんが,MRSAの場合はおもに手指を介した接触感染ですので,意味がありません。同じ理由から,病室を隔離したり,カーテン隔離やスリッパの履き替えなど,いずれも無意味です。

3. △〜○普通の石けんでも正しい手洗いをすれば十分有効です。何か特別なことをしたいなら,薬用石ケンより「すりこみ式手指消毒薬:ウエルパス(R)とかイソジンパーム(R)とかヒビソフト(R)とかいうようなやつ」のほうがずっと有効なように思いますが……。でも他に選択肢がないですものねえ……。

4.×飛沫感染の場合にある程度有効です。飛沫核感染である結核の場合は,N95マスクという特殊なマスクが必要となります。今年は問題が出ませんでしたが,飛沫感染と飛沫核感染の区別,というのも感染制御のひとつのヤマです。

(正解)3(うーん……)

 

AM99.STD

チーズ状帯下,強い掻痒感および性交時の出血を訴える女性に考えられるのはどれか。

1. トリコモナス腟炎
2. カンジダ腟炎
3. 淋菌性頸管炎
4. クラミジア頸管炎

(解説と解答)

STDの症状を問う問題です。

1. ×教科書的には帯下は悪臭が強く黄色泡沫状,ということになっています。典型例では掻痒が強いが無症候も約半数。悪臭の原因は混合感染した嫌気性菌という説もあります。

2. ○これまた教科書的にはチーズ状とか「おから」状とか(なぜか食べ物に形容されることが多い)の帯下を伴う。

3. ×外子宮口からの粘液性・膿性分泌物,というのが典型例だが無症候のことも多い。

4. ×臨床症状では淋病と区別がつきにくい。ということで1つ選べ,となれば3と4は併せて×,となるのですが……。

(正解)2

 

AM120.B型肝炎

B型肝炎の垂直感染防止に有効なのはどれか。

1. キャリア妊婦に HB ワクチンの接種を行う。
2. 新生児の沐浴には次亜塩素酸ナトリウムを用いる。
3. 新生児に母乳を与えない。
4. 新生児に抗 HBs ヒト免疫グロブリンと HB ワクチンとを投与する。

(解説と解答)

B型肝炎キャリア(HBs抗原陽性)の妊婦に対しては国の母子感染予防事業があります。昔は HBs 抗原陽性かつ HBe 抗原陽性の妊婦のみが対象となっていたのですが,現在では児のキャリア化を防ぐ,というよりもう一歩踏み込んで,一過性急性感染も含め(これでも劇症肝炎となったら致命的です)垂直感染を防ぐ,という意味で,HBe 抗原陰性の妊婦に対しても予防を行う(但し両者でプログラムは異なる)ことになっています。
具体的に何をするか,というと,新生児に HB 特異的免疫グロブリンと HB ワクチンを接種します。

1. ×キャリアにワクチンを接種しても何らの治療効果も副反応も来さない。ましてや児に対しては何の効果もない。

2. ×産道感染が主である,というのは正しいのだが,4. の効果が明らかなので,次亜で赤ちゃんを洗う(!)必要はないし,皮膚刺激性がありこんなことはしないでしょう。

3. ×産道感染が主である。母乳感染も可能性はあるが,4. の措置を講ずればとくに母乳を禁ずる必要はない。

4. ○

(正解)4

 

AM123.予防接種の注意事項

乳幼児が受ける定期予防接種の注意事項で正しいのはどれか。

1. 夏季には接種をしてはならない。
2. アレルギー体質の児には禁忌である。
3. 接種後 24 時間経過すれば副反応の出現はない。
4. 接種当日は入浴してよい。

(解説と解答)

1. ×ポリオワクチンの場合,他のエンテロウイルスと干渉するかも知れない,ということで夏季には接種をしないことになっていたが,1994年の法改正でこの規定はなくなっている。それでも地域一斉投与,6週間以上あけて2回接種,という理由から,多くは春と秋にやっているようである。一般的に病気の多い年齢や季節を避けて接種する(予防接種ガイドライン)ことにはなっていますが,夏に限ったことではありません。

2. △〜×省令で「接種不適当者」が定められています。明らかな発熱のある者,重篤な急性疾患に罹っていることが明らかな者,接種液の成分でアナフィラキシーを呈したことが明らかな者,妊娠している者(ポリオ,麻疹,風疹ワクチンのみ),その他,ということです。絶対ダメ,というわけではないが,場合によってはダメ,という「要注意者」 には,基礎疾患のある者,前回の接種で発熱・アレルギー反応を呈した者(繰り返し接種するワクチンの場合),けいれんの既往,免疫不全,接種液の成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者,などがあります。「単なる喘息,蕁麻疹,アトピー性皮膚炎などの一般的なアレルギー性疾患は,そのアレルゲンがワクチンに含まている場合(一部のワクチンでの卵アレルギー,ゼラチンアレルギー,抗生物質アレルギーなどが考えられる:なかの注)にだけ配慮が必要である。そういう疾患をもつというだけでは禁忌の対象とはならない(「予防接種の手引き:第8版。木村・平山・堺著,近代出版2000)」。

3. ×そんなことはありません。体内で病原体が増殖する,ということで,一般に生ワクチンのほうが副反応が遅めに出ます。麻疹ワクチン後の発熱は接種後 5〜14日,ポリオワクチン接種後の弛緩性麻痺(50万人に1人の割合)は4〜35日後(平均15日)に起こるので,ワクチンによってはそれくらいの観察期間は必要ということになります。

4. ○「入浴は差し支えありませんが,わざと注射した部位をこすることはやめましょう」「接種当日はいつも通りの生活をしましょう。はげしい運動はさけましょう」(「予防接種と子どもの健康」厚生省:平成7年4月)というふうに指導してあげてください。

(正解)4

 

PM13-15.慢性C型肝炎

55歳の男性。会社員。妻と2人暮らし。人間ドックでC型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性を指摘された。自覚症状はない。受診の結果,HCV-RNA陽性,AST(GOT) 20 IU/l,ALT(GPT) 30 IU/l,総蛋白 7.5 g/dl,アルブミン 4.5 g/dl,総コレステロール 201 mg/dl であった。約 15 年前に輸血を受けたことがある。身長 168 cm,体重 64 kg。1年前から週に5日のペースで毎日約 5 km のジョギングを始め,体重が約 4 kg 減っている。若いころから酒が好きで,現在は毎日ビールを約 700 ml 飲んでいる。

〔問題13〕

受診時の状態はどれか。

1. 過去にC型肝炎ウイルスに感染し,現在血液中にウイルスは存在しない。
2. 現在血液中にC型肝炎ウイルスは存在しないが,肝細胞の破壊がある。
3. 現在血液中にC型肝炎ウイルスが存在しているが,肝細胞の破壊はない。
4. 現在血液中にC型肝炎ウイルスが存在しており,肝細胞が破壊されている。

〔問題14〕

男性への指導内容で適切なのはどれか。

1. ジョギングを軽い体操に変更する。
2. 動物性蛋白質をできるだけ摂取する。
3. 自覚症状がなければ受診しなくてもよい。
4. 飲酒をやめるよう勧める。

〔問題15〕

5年が経過し,男性の病態が慢性C型肝炎へと進行したため,インターフェロン療法が始まった。治療開始後 30 日,男性は不眠になり「仕事もうまくいかないし,どうせ肝癌になるのだし,もう死んでしまいたい」と看護婦に訴えた。

対応で適切なのはどれか。

1. 「もう少し頑張ればウイルスを駆除できますよ」
2. 「気持ちが明るくなる薬を処方してもらいましょう」
3. 「インターフェロン療法を中止することになるでしょう」
4. 「気分転換になるようなことを考えましょう」

(解説と解答)

(問題13)

C型肝炎の抗体検査はスクリーニング目的で行われることも多いのですが,無症候で抗体陽性となった場合,約7割がキャリアであり,残り3割は過去の一過性感染ののち治癒し抗体のみ陽性で持続している状態である。よって抗体陽性,というだけではいずれの選択肢もありうる。鑑別のポイントは(抗体ではなく)「ウイルスそのもの,あるいはその構成成分を検出する検査」である。抗原の検査としてコア抗原EIAがほぼ実用化できるところまできているのだが,現時点での主流は RT-PCR あるいは分枝鎖DNAプローブ法によるウイルスゲノムRNAの検出である。本文に「HCV-RNA陽性」とあり,この検査をおこない,陽性であったことが分かる。これは「現在ウイルスが体内に存在している」ことを意味している。一方,肝細胞の破壊の度合いはいわゆる「逸脱酵素」(本来血中に存在しない酵素が,臓器の細胞が破壊されることによって血中に出てきたもの)を見ると分かる。肝細胞の場合,GOTあるいはGPTということになり,本症例ではいずれも正常値である。よって3が正解となる。

(問題14)

これは消化器内科の問題であろう。微生物学とは離れる。

(問題15)

これまた消化器内科の問題,あるいは精神科の問題かも知れない。インターフェロン療法に伴い抑うつが生じることがある。場合によっては自殺企図に注意する。うつに対して「頑張れ」は禁忌,治療方針に関することは推測で話さず主治医と相談して決める,となれば選択肢は狭まってくる。

(正答)順に3,4,4


Takashi Nakano MD,PhD.